夜明け
時々身体中に激痛が走るが腰を曲げヨロヨロすればするほど
痛みは激しくなる。
先生のおっしゃる通り、しっかり背中を伸ばして歩く。
病室にいろんな人が訪ねてきてくれた。
痛いけれど、笑って過ごす。
笑うたび、また腹やら腰やら背中やらが痛むのが、また何だか間抜けで可笑しくて。
それらすべてを最近出逢ったばかりの大切な人と分かち合う。
なんという、喜び。
夜、なかなか眠れなかった。
少し騒がしい病室を抜け出して、ほの暗い病院の廊下を二人して歩く。
ん?いつの間にか私たちの足元には紅色のストライプが広がっている。
ふと見るとブラインドの向こうに朝焼けの空が見えた。
薄紫色から鮮やかな赤のグラデーション。
かけがえのない人と見る初めての朝焼け。
私とその人はそっと秘密の目配せを交わした。
「これからいろんなことがあるだろうけれど私たちはこの美しい朝のこと、ずっと忘れずにいましょう」
空の向こうから
透明な紙飛行機がすうっと飛んできて、私たちの目の前に着陸した。
私たちは手を握り合い、二人して、行き先の分からないその乗り物の、透明な羽の上に腰をおろした。
やがて、紙飛行機は音も無く、すうっと
飛び始めた。
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