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とうめい にんげん

家族が数人、ときどき、小さな同居人に会いにやってくる。

私とはほとんど喋らず、小さな同居人にしか語りかけない。

何か用事や伝えたいことがあったら、繰りかえし繰りかえし急いで喋らなければならない。

誰も私の話など聞きたがっていない。

そういう時、自分が、透明人間みたいな気がする。

最近まで信用できるかなあと思っていた人も、ふたを開けてみたら、実は家人と同じだったのでガッカリした。

別に自分が主役になりたいとかではなくて、一人の人間として見てほしい、それだけ。

その場に存在していない、無視は悲しい。

私はどこに行っても何かの道具なのかな。

小さな同居人の世話をする係。

台本を書く機械。

そうなのですか?

何より、尊重されていない自分を小さな同居人に見られるのが恥ずかしくて、苦しい。

泣きながら蓮根をすりおろす。

まぐろの蓮根蒸しはとても上手にできた。

小さな同居人は気に入るに違いない。

どこにも安らげる場所などない。

助けて、助けて、と呟きながらゴミを出していると、にゃう、と声がした。

去年の夏、私を励ましてくれたお母さん猫だった。

そうだね。

あなたはこんなに小さい身体で、何匹も子猫を育てあげたんだものね。

もっと、しぶとくならねば。

だけどなんでこんなに悲しいんだろう。

ときどき、話したいの、それだけ。

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