やさしいから
小さな小さなお雛様を飾った。
着物から調度品まで、すべて和紙でできている。
精巧な作りの5段飾り。
可愛い。
産まれてまもなく、考え抜いて、とりわけ小さいものを選んだ。
小さな同居人が成長して独立する時に持っていけるように。
これならどこにでも持っていけるし、どんな空間にも似合う。
今年は、上空に花の飾りを吊るし、後ろには和紙をあしらってみた。
深夜、近所に住む、ライター仲間が訪ねてきた。
最近、終わった共同の仕事の打ち上げをする。
私は酒は飲めないが、お茶を飲んで、お煎餅をひたすら食べる。
そして喋る。
素敵な人を時々見かけるけど、縁はないねえ。
ポリポリ食べながらそんな話をする。
彼女といると、女の子に戻ったみたいな気分になって、ちょっとウキウキする。
そういえば、朝も女の子気分だったっけ。
小さな同居人が自転車の後ろで話していた。
「きょう、ほいくえん、おさんぽいくかな?」
「行くと思うよ。どこに行きたい?」
「こうえん」
「こうえん着いたら、誰と遊ぶの?」
「Kくんと あそぶの」
「どうしてKくん?」と私。
「Kくんは やさしいから」
「ふうん。そ、そっか……」
ちょっと動揺してしまった。Kくんやさしいのかあ、そうかあ。
Kくんは小さな同居人と誕生月が一緒の子。
お誕生会の舞台で手をつないだのがきっかけで、
その後もしばしば小さな同居人の手を握っているのを見かける。
どうも、それが使命だと感じているようなのだ。
小さな同居人は最初、それが気に入らず、手をはねのけていたけど、
今は慣れてきて、好きになったのか?
押しに弱いタイプかもしれない。
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